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自己愛性人格障害(354) プレゼンスとルサンチマン

今回は観念的な話になる。「プレゼンス」は存在感と訳すのが最も本来の意味に近い。「ルサンチマン」は日本語の適訳がないが、wikipediaから引用すれば『弱者が強者に対して、「憤り・怨恨・憎悪・非難」の感情を持つこと』と定義される。ここで重要なのは、この「憤り、怨恨、憎悪、非難」の感情が弱者が強者に対してという点である。逆方向の感情はルサンチマンに当てはまらない。弱者から強者に対しての感情を指す。ではwikipediaの記述に沿って論を進めていこう。

『ニーチェによれば、ルサンチマンを持つ人とは「本来の『反動』、すなわち行動によって反応することが禁じられているので、単なる想像上の復讐によってその埋め合わせをつけるような徒輩」である。』

弱者から強者に対しての感情は、立場をしてそれを行動で表す事が禁じられている。恐らく定義づけした人たちは会社の上司、資本家、スポンサーなどを想定していたであろう。ワシはさらに「道徳的に間違っている」「理不尽さを理解している」ために感情を行動で表す事が禁じられていると想定する。つまり「憤り、怨恨、憎悪、非難」したいけれど、それは間違った感情だと自分で意識がある場合である。

石ノ森章太郎が前衛的な作品で好評を博す。手塚治虫が「あんなものは漫画ではない」と酷評する。手塚治虫には書けない前衛作品という点において石ノ森は強者で手塚は弱者である。手塚治虫は反動として対抗する作品が書けないため、想像上の復讐、別の場所で酷評という手段で対抗した。先輩の酷評にショックを受けた石ノ森はその作品の連載を中止すると宣言。手塚は石ノ森の自宅へ飛んで行って謝罪したそうである。「自分でもなんであんなことを言ったのかわからない。本当に自分で自分が嫌になる。本当に申し訳なかった」。

本来、同じ土俵で対抗すべき事を、それが出来ないために別の手段で対抗した。しかしその別の手段は筋が間違っていると自覚があったため、手塚治虫はすぐに石ノ森に謝罪をした。人格障害者キッチーは、言論で対抗すべき事を、言論で勝てないために嫌がらせで対抗しようとした。言論で対抗すべきところ嫌がらせで返すというのは間違っている自覚があるのだろうが、手塚のように素直に謝罪することが出来ず、ダンマリを決め込んでいる。一緒にして手塚先生には申し訳ないが、弱者が強者に対する「憤り、怨恨、憎悪、非難」の感情という点において、動機は人格障害者キッチーと同じであり、本筋で対抗出来ないために筋違いの方法で対抗するという点も同じである。謝罪するかダンマリするかが手塚治虫と人格障害の違いなだけであって、動機と手段は共通している。

『ルサンチマンを持つ人は社会的弱者であり、自身では社会的格差を解消できず、一般的な価値観を否定したり、逆転した価値判断を行っている。如何ともしがたい社会的格差を前にして、価値判断を転倒させ、自分の無力を正当化し、社会的強者を攻撃してしまう精神性は、反社会的行動にも繋がって行く。』

前掲の例では、手塚治虫は石ノ森のような前衛作品が書けず、その価値観を否定した手塚治虫。美味しそうなブドウがなっている。しかし手が届かない。「ふん、あんなブドウなんか、酸っぱいに決まってる」と、手に入れる努力をしようとせず、そのブドウを貶すことで精神を保っている状態である。言論でかなわなず、嫌がらせという形で対抗した人格障害者キョショー。自分では解消できない事柄に対し、自分の無力を正当化し他の手口、筋違いの別の方向から強者に対して攻撃することで留飲を下げようとしている状態である。

『社会的強者であれば、権力を行使して自身を取り巻く状況を改善することが出来るため、仮にルサンチマンを持ったとしても、短期的に解消可能である。こうしたルサンチマンの表れの例として、敵を想定し、その対比として自己の正当性を主張するイデオロギーにある。こういったイデオロギーは、敵が悪の元凶とし、だから反対に自分は優れていると主張する。「彼らは悪人だ、従ってわれわれは善人だ」ということになる。敵として想定される存在は、自分に無力を感じさせる対象が選ばれる。』

少し長いセンテンスだが人格障害者の思考を知る上で重要なファクトなので熟読して欲しい。強者は自分で短期的に解消が可能である。お金が欲しかったら働いて稼ぐ、大学に行きたかったら勉強する、自分で現状を打開できる能力がある強者はルサンチマンを持ちえない。しかし自分が努力したくない、努力する能力もない、ただその状態を羨むだけの弱者もいる。弱者ほど高望みし、それが自分のものにならない状態に不満を募らすものだ。人格障害者がいつもブチブチ不満ばかり口にし、他人の悪口ばかり言っている原因は、ひとつは分不相応な高望みに起因する。他者を否定することで自分を肯定する思考がルサンチマンの特徴であると言える。「あの人は美人だ。だけど家が貧乏だからね」「あの人はみんなに好かれている。だけど仕事は出来ないからね」「あの人は有名大学を出ている。だけど大学なんて意味ないよね」と、相手を否定することで、「容姿」「人望」「学歴」という自分にない点を持っている相手よりも、自分の方が優れていると自分自身で納得させている。しかもその相手が自分より優れていればいるほど、強く相手を否定して、相手の優れた分の反動として自分の優位性が際立つと勘違いしている。

普通程度の読解力があれば、ここまででルサンチマンの正体がわかろう。ルサンチマンとは、即ち「嫉妬」である。人格障害者が行なう嫌がらせは、自分にないものを持っている相手に対する筋違いの対抗手段である。人格障害者が口にする悪口は、相手を否定することで自分が正しいという自己暗示である。嫌がらせや悪口の相手が優れていればいるほど、即ち相手のプレゼンスが高ければ高いほど、それを否定する事で、その分の反動で自分が優位になると勘違いしている、人格障害者特有の思考である。それらは全てルサンチマン、つまり「嫉妬」を主たる理由としている。

ようするに妬みだろ。妬み。

 

Posted on 2018-03-25 | Category : ブログ | | 8 Comments »
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コメント8件

 セルフィッシュ | 2018.03.25 10:25

はじめまして。セルフィッシュと申します。私は以前自己愛から被害にあい、それから毎日のように拝見させていただいています。手塚治が嫉妬してこのようなことをするとは意外でした。社会的に名誉な職業に就くことができたのに、敢えて漫画家になった人間ですからルサンチマンを鼻で笑うタイプの人間だと思っていたのに…。
石ノ森先生の前衛的な作品はおそらくサイボーグ009だと思いますが、この作品は人間のエゴイズムをテーマにしていますよね。(せんちさんは以前Twitterでサイボーグ009を取り上げていたのでよくご存知だと思います。)せんちさんに執着しているストーカー野郎もおそらく自分の心の闇をせんちさんに見透かされたからせんちさんに執着しているのだと思います。

 オリーブ | 2018.03.25 11:49

せんちさん

同い年の昭和47年女です。
移住して就職した先で自己愛の被害に遭ってしまいました。
このブログに出会い、どれだけ救われたことでしょう。
扉を開くことができました。来月転職して離れます。
本当にありがとうございます。

ここから離れると決めたものの、
被害の後遺症は残るもので、
毎日何かしら思い出して気落ちしては、
ブログを読んで奮い立たせています。
実際まだ隣にいるものですから、イヤでも顔を合わすのです。

今回の記事、目の前が明るくなりました。
嫉妬。そうか、そうなのか。

あの自己愛女は、私に嫉妬していたんだわ。
確かに私、あの女に無いものをたくさん持っているもの。
それが羨ましかったんだわ。
だから無いこと無いこと触れ回って、私を孤立させていたんだわ。

思い返すと、なぜかこの女はいつも機嫌が悪い。
それでもこの女が主導でやっていかないと仕事が進まないので、
少しでもこの女が仕事しやすようにと気を回し、
雑用その他やりたがらないことを進んでやったのも悪かったのか、
かなり図に乗らせてしまいました。

職場スペースは、この女と二人きりでデスク並べていたので、もう言われ放題やられ放題でした。

あの女のアタマの中では、私は仕事ができない、気が利かない、給料ドロボーのダメ女なんだそうで、
毎日毎日罵倒されました。
ずっと真に受けていたけれど、今ならはっきりわかります。
”いやいや、それ全部アンタそのものだからね”ってこと。

それどころか最近は、他のメンバーの悪口を私に吹き込んできます。
私が退職することを、自分のせいにしたくないので、ご機嫌を取ってくるのがミエミエで。
ご機嫌のとり方が、他人の悪口を吹き込むことなのか。低俗すぎる。
悪口があまりにうるさいので、
「その苦言、本人に伝えといてあげるね。」って返してやりました。

色んな所でトラブルを起こすのも自己愛そのものです。
もちろん罪の意識はまったく無く、全部他人のせい。
訴えられて近々裁判にかけられるっていうのに、
それでもまだ自分は悪くないんだそうです。

貴女は今後もまだまだトラブル起こすんでしょうが、
私は貴女が到底追いつかないところでキラキラ幸せに暮らしますので、せいぜい羨んでください。

一生やってろ、バカ。

 でらせるな | 2018.03.26 8:16

おはようございます

セルフィッシュさん
石ノ森さんの前衛的な作品とは「ジュン」のことだと思います

ほぼセリフなし
イメージ映像のような画面と
登場人物もジュンという少年と
ちいさな女の子
なんとかいう同人雑誌みたいなのに連載されてたんじゃなかったかな

本題からそれて失礼しました

 笛吹き | 2018.03.26 17:04

自己愛の妬みは気分が悪くなるくらいのすさまじさがあります

私の近くに居る自己愛は正体がバレてきて
6月で契約切れ、契約更新はしないとの通告を受けたのに
延命工作に必死になっています。

今まで口ばかりで何もしてこなかった(本当は出来ない)のに
ここへ来てわざとらしい仕事やってますアピール。

加えて人を貶めるための悪口も止めれれない止まらない。
今朝も毒を吐いていました。

タゲられて何年も耐えてきて本当に疲れ果てました。
縁が切れた時の自分はどうなるのだろうという不安。

いや、まだまだ執着されるであろう恐怖

すみません
ここに書くことで救われる気がして・・・

 水彩色鉛筆 | 2018.03.26 21:49

皆さんのコメント読んで
「ホンモノ」に会ってしまった
方々なんだな、と思いました。
単に性格がアレな人と
自己愛は違うのに!
悔しくなることがあります。
私もブログを読んで仕切り直したい。

 ボーダー被害者 | 2018.04.01 14:34

ホンモノの自己愛&ボーダー….
まさしく奴等だった

自分槍玉になったら責任擦り付け言い触らし被害者になりたがる達人..
自分のしてることに罪悪感全く無し..

 しろた | 2018.04.08 1:45

せんちさん、みなさんこんばんは。

以前自己愛知人に疲れている報告をした者ですが、
自己愛被害を相談していた相手も自己愛だったというダメージを受けてしまいました。
まだまだ私の見る目は未熟だった訳です。

2人目の自己愛は私が受けてきた1人目の悪事の数々を、
自分の経験かのように周りに吹聴して
1人目を追い出した英雄となりました。
しかし内情を知る私のことも同時に悪者にしてしまい、
私自身もその場に居られなくなってしまったのです。

いきなりほとんどの人からの連絡が途絶え、何事かと混乱していまそたが、
最近やっとこれらのことが分かってきて、返ってすっきりしてしまいました。
扉が開いていないであろう人達とは言え、
自己愛を英雄扱いする集団に身を置くことは耐えられませんし。

これで自己愛に違和感を感じて離れていたり、追い出された人達と、
なんのしがらみもなくつきあえます。

2人目は1人目よりは狡猾でしたが自己愛らしくカリスマ性も人脈も乏しく、
人真似(というよりパクリ?)の企画しか思いつかない人です。
なにより作る物全てがオカンアートなセンス!
なのに自分はセンス抜群で強運な最高にできる人間と思い込んでいる大馬鹿。
そんな人の意見で動く集団なんて砂の城より脆いのは明らかだし、
いつまで続くか傍観者として楽しもうとかと思っています。

 笛吹き | 2018.04.09 15:50

扉が開いた今、思い返してみると

自分の父親に始まり
この人は自己愛の疑いがあるなという人から
ガチ、本物の自己愛まで

なぜか自己愛人格障害者との遭遇率が高い気がしてなりません。

今度関わることになった人もグレーな感じです。

人を操作したがる人。人を自分の思い通りに動かしたい。
自分は出来るんだと見せつけたい、そのためならいろんな策を講じる策士。もちろん嘘もあり。
声が大きく、話しながら自分の素晴らしさに酔う。
都合が悪くなると知らん顔。

書いているうちにグレーじゃなくて黒かもしれないと思えてきました。

今度また被害に遭いそうになったら被害が大きくならないうちに縁を切ろうと思います。

自分の心と身体のためにも

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